takakakunのブログ

日々の暮らしの中で、ふと思ったことを書いてます。

あの日の君は、すごかった。

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

これは、子どもが小さかった頃の話です。

「息子と一緒に、ちょっとサイクリングでも楽しんでみよう」という軽い気持ちから、そのころ、まだ小学校低学年であった息子と一緒に電車にのって、サイクリングの聖地として有名な橋(しまなみ海道)に行ってみた。

さすが、サイクリングのメッカ!ちょうど、GWの連休中ということもあり、現地は思い思いにサイクリングを楽しむ人たちであふれかえっていた。
まずは、レンタルサイクルターミナルで自転車を借りると、係のおじさんがコースMAPをくれ、アドバイスをしてくれた。
『はじめて?(笑顔)』
『あ、はい』
『お子さんと一緒なら、○○島に行って引き返してくるこのコースくらいがちょうどいいよ。ちょっと物足りなければ、○○公園まで足を延ばすといいからね』とMAPにある『初心者向け〇〇モデルコース』を指さしながら、所要距離や観光スポットなども、笑顔で優しく説明してくれた。初心者らしき親子を気遣って、親切に教えてくれるやさしい言葉に、私も息子も「へえ、そうなんですか?」「なるほど!」「わかりました!」と相槌をうちながら...おじさんおすすめの、”子どもや初心者でも比較的走りやすい”という、そのコースを走破することに決めた!比較的義理堅い性格の私たちは、せっかく教えてくれたことへのお礼なのか、係のおじさんに、「じゃ、○○島に行って引き返してきます。ちょっと物足りなければ、○○公園まで足を延ばすことにします」と律儀に決意表明していた。
 かくして、私と息子はサイクリング初心者にもかかわらず、周囲の雰囲気に触発され、あたかも自分たちもいっぱしのサイクリストであるかのような錯覚を覚えながら。。。順調にスタート地点に立ったのです。

思い返すと、それが間違いのもとだったのかもしれない。。。

『それじゃ、行きますか』『うんっ』お互い見つめあい、無言でうなずき合う親子。。。私はママチャリに息子は子供用自転車にまたがり、ヘルメットをかぶってリュックをしょった姿で、スタート地点のレンタルサイクルターミナルからやる気満々で出発した。

目的の島に到着!

往路は、おじさんから聞いてた通り下っているのか、景色を眺めながら、余裕で快適ライド。対向車(対向自転車?)のサイクリストと、お互いに「がんばって~」などとエールを送りあいながら!軽快に、スイスイと。。。目的の島には、軽い疲労感を覚えたものの、女、子供の足でも難なく到着した。島につくと、すぐ近くに道の駅があり、小腹のすいていた私たちは、そこで名物の海鮮焼きを食べた。エビやタコやイカや貝や魚など好きな海鮮をビュッフェ形式で選んで七輪で焼いて食べる名物料理である。
『やっぱ、新鮮さが違うね』『うん、とれたてはサイコーやね』と旅の醍醐味であるグルメを楽しみながら、目の前の海を眺めた。気持ちの良い風に吹かれ、日ごろの仕事疲れも吹っ飛んだ≪あー来てよかった、きっもちいー≫
そんなこんなで、観光気分を満喫しながら、食事を終えた私たち。
『これからどうする?』(母)
『いま、何時』(子)
『まだ、昼前よ、、、しんどくなかったら、あのおじさんが言ってた○○公園に行ってみる?』(母)
『うん、僕、大丈夫。行くっ!!』(子)

しかし、この後。。。

 想像もしない事件が起こった。どこでどう間違えたのか、公園目指していたはずがどんどん山道へ、自転車に乗ったままでは進めない急な坂道にはいり、押して歩くことに。さすがにこれはおかしいと思った私たち。あんなに大勢いたサイクリストたちの姿も誰一人として見えない。「おかあさん、道間違えたんじゃない」「地図、僕にも見せて」と言って、息子はMAPを見返しながら、「多分、今この道通ってるから、このまま行けば着くはず」と言って笑って励ましてくれる。目の前は九十九折れの坂道。自転車を押して一歩一歩上り続ける息子に続いて、あの角を曲がればきっと山頂、登りはおしまいのはずと何度も声をかけあいながら進む親子、、、無情にも期待は裏切られ続ける。いくどとなく角を曲がり、その度に期待を裏切られ、いつまで登ればよいのか見当もつかず途方に暮れて、心理的にもどんどん追い詰められる私たち。それでも、前を行く小学生の息子は、だまって汗を垂らしながら小さい体で自転車を押して急な坂道を一歩一歩進みつづける。(その小さな背中を見ながら『日ごろは甘えん坊なのに、小さくてもやっぱり男の子だなー💛』とジーンとする私)もう無理だ、こんな小さな子どもには過酷すぎる。引き返そうと思った矢先...「おかあさん、見て!てっぺんに着いたよ~よかったぁ~」と満面の笑みを見せ歓声を上げる息子。「よかった~」二人は手を取り合って喜んだ。それからは自転車に乗って。スイスイと下っていく、途中、下りの中腹くらいにくるとカレーのいいにおいがしてきた。山の中のレストランを発見。人気のようで行列ができていた(もちろん、みなさん、車で来てました)。行列に並ぼうとしたが、午後2時ランチタイムのラストオーダーは無情にもすんでしまっていた。がっかりする私をしり目に息子は、「おかあさん、僕、持ってるジュース飲むから大丈夫」と言ってリュックからジュースを出してゴクゴク。「電車の時間に間に合わないかもしれないから、もう帰ろう」(なんとも男らしい!!)
そのまま下ると、ルート沿いの道路に出て、無事、帰途に就くことができた。公園のことなどすでに2人の脳裏から忘れ去られていた。帰りの橋の上では、息子は渾身の力で激漕ぎを見せた。子供用の小さな車輪の自転車で、大人たちの自転車さえもぐんぐん追い抜いていく走りを見せた。私も負けじとそのあとについていく。追い抜いたサイクリストたちからは、「あの子、めっちゃ早いなー」と息子の激走に感嘆の声が上がるのが聞こえていた。

無事、帰還。

 そうして、無事にサイクルターミナルに到着。走り切ったご褒美に併設のカフェでドリンクを飲めるチケットをもらった。せっかくだから、行ってみるが、チケットはコーヒーかアイスコーヒーにしか使えなかった。息子はコーヒーが飲めない。日ごろは、アンパンマンの子ども用カフェオレさえも、「苦い!」と言って飲めない。とはいえ、タダなのでアイスコーヒー2つとオレンジジュース1つを頼む。二人供とてものどが渇いていたので、出されたお冷を一気飲み、その後出されたオレンジジュースも一気に飲み干す息子。私がアイスコーヒーを飲んでいると、余った方のアイスコーヒーを眺めながら「おかあさん、苦い?せっかくだから、僕も、飲んでみようかな」というや否や、シロップとミルクを入れてストローでくるくる回すと、一気に飲み干す。「だいじょうぶ?」びっくりして私が聞くと、「あれ、なんかのどが渇きすぎたのか、あんまり苦くないや」と本人もびっくりした様子。二人で「あはは」と大きな声を出して笑った。一息ついた私たちは、今日のライドを振り返った。「それにしても、偉かったねー」と私が言うと、「僕、正直、きつかった。。。だって、上っても上ってもまだ上りなんやもん。正直、頂上に着いたときは、すごい嬉しかった」と話す息子。「帰りの激走もすごかったねー、他の人たちもすごいって話してたよー」と伝えると、「あの時、僕、一気に走らんと絶対嫌になると思って、ガーーーって漕いだんよ。自分でも、びっくりした!」と言う。いろいろ思うところがあったようである。
 帰りの電車では、息子はすぐに眠ってしまった。よっぽど疲れたんだと思う。その寝顔を見ながら、『本当によく頑張ったね。えらかった!お母さんの子どもに生まれてきてくれてありがとう!』という気持ちがジーンと湧いてきた。